近年、『がんの遺伝子治療』を取り扱う医療機関が増えつつあります。一昔前に夢の治療と騒がれたことをご存知の方もいるかもしれませんが、遺伝子治療とはどのような治療なのでしょうか。
遺伝子治療を知るには、がんがどのような病気なのかを考えてみる必要があります。がんという病気は言ってみれば遺伝子の病気です。遺伝子が正常なコントロール機能を失ってしまった状態ががんなのです。
正常な細胞には寿命があり、その役割を終えれば自死するようコントロールされています。しかし、がん細胞は正常細胞の栄養を奪いながらいつまでも生き続ける、いわば死なない細胞です。それを抑制するためにがん抑制遺伝子があるのですが、何らかの原因で働くことができず、がん細胞を無制限に増殖させてしまうのです。
この遺伝子異常を正常な状態に戻してあげようとするのが遺伝子治療です。がん抑制遺伝子を注射もしくは点滴で体内に導入することで、細胞分裂を抑えたり、異常な細胞を自死させて、がんを消していこうとするわけです。
もともと人の体にある遺伝子を扱うので副作用がほとんどみられず、ほかの治療に組み合わせることも可能など、メリットが大きい遺伝子治療は大きな可能性を秘めた治療法だといえるでしょう。